「君と会えたから・・・・・・」喜多川泰 (ネタバレ)

 ストーリー仕立ての自己啓発本

・GIVEのリストとTAKEのリスト。自分が他の人にやってあげたいことを日々一つでも多く実現しようと努力すると、望みが追いついてくる。

・お金を儲けるということは、〈ありがとう〉を集めるということだ。

・自分の中に明かりが灯っている様子をイメージする。それをどんどん大きくする。誰よりも大きく、明るく、強く。自分の内側に明かりを灯すだけで、それらすべてのコンプレックスや、今日の自分をつくり上げるためにできた傷は、その人の魅力を引き出す個性になる。

・手段を目的にするな。職業というのは夢を実現するための一つの手段であることを忘れてはいけないし、それがダメだからといってすべてがダメというわけではない。飛行機に乗れないからといって目的地に行くこと自体を諦めるな。

・できないという先入観を捨てる。昨日までできなかったことを理由に、自分は一生それができない人間だと決めつけてはいけない。昨日までできなかったという事実が、今日もできないという理由になんかならない。

・一日一日を大切にして、少しずつでも今日も夢に向けて一歩前進したと思える毎日を過ごす。明日を生きることを約束された人はこの世に誰もいない。

「ニムロッド」上田岳弘 (ネタバレ)

 仮想通貨を題材にしたストーリー。よく出来てる。駄目な飛行機の話しとニムロッドの小説が、本編と並行されるところがとても良い。

 主人公の中本さんと会社の先輩である荷室さん、通称ニムロット、恋人の田久保紀子。

 中本さんは社長にビットコインを掘る、マイニングする仕事を命じられる。

 荷室さんから"駄目な飛行機コレクション"のメールが届く。ニムロッドは小説を書いていて、中本さんのときどき感情と関係なく左目から流れる涙を小説に取り入れる。

 田久保紀子が「プロジェクト完了。疲れたので東方洋上に去ります」というLINEを最後に去る。

 ニムロッドの小説は、塔の最上階に住む人間の王ニムロッドが駄目な飛行機を集める話し。すべての駄目な飛行機を集めきったニムロッドは駄目な飛行機に乗って太陽を目指す。

 ビットコインの採掘量は減っていき、新規の仮想通貨を作ることになる。中本さんはその仮想通貨の最小単位をnimrodにしようと考える。

「一人称単数」村上春樹

 短編集。淡々とした雰囲気が良い。

抜粋

「クリームの中のクリーム、とびっきり最良のものという意味や。人生のいちばん大事なエッセンスーそれが『クレム・ド・ラ・クレム』なんや。わかるか?それ以外はな、みんなしょうもないつまらんことばっかりや」

「門」夏目漱石 (ネタバレ)

 親友である安井を裏切り、御米と結ばれた宗助。神経衰弱になりながら御米と仲良く暮らしている。裏に住む坂井のところに安井が滞在する予定であることを聞いて、禅寺へ行く。悟りを開くことを諦めて家に帰ると、安井はすでに坂井の家から出発していた。

 宗助と御米が裏切りから始まった仲だとしても、仲良くお互いを必要としていて良いなと思った。夏目漱石は読みやすい。

 最後抜粋

 御米は障子の硝子に映る麗かな日影をすかして見て、

「本当に有難いわね。漸く(ようやく)の事春になって」と云って、晴れ晴れしい眉を張った。宗助は縁に出て長く延びた爪を剪(き)りながら、

「うん、然し(しかし)又じき冬になるよ」と答えて、下を向いたまま鋏を動かしていた。